およぐ、およぐ、泳ぐ

不安障害です。日々のことを書いていきます。

種の保存

あるはるかのさえぐさです。

 

ずっと引っかかっている思い出がある。なるべく自己弁護に走らないように書きたいが、これを書くこと自体が自己弁護になり得ると思う。

 

小学生のとき、大好きな先生がいた。その先生は、はじめてわたしの文章を褒めてくれた先生で、国語の能力が高いと言ってくれた先生だった。

 

私にとって先生は「善」だったし、「是」だった。

 

ある時彼はこう言った。なんの会話の流れからかは忘れた。

 

「おれ、ゲイだけはダメなんだよ〜」

 

教室中に高らかに笑い声が響いた。良い天気の日だったような気がする。普段から面白い冗談を言う先生で、この発言も、その流れだったと思う。

 

当然わたしも大きな声で笑った。何の疑問も抱かずに笑った。

 

大人になってから思い出す。あの場所に、もし、女の子を好きな女の子がいたら。男の子を好きな男の子がいたら。自分の性と身体に微かな違和感を持っている子がいたら。男の子も女の子も両方好きな子がいたら。恋愛という感情そのものを一切抱かない子がいたら。

 

もしそんな子が、あの教室の中にいて、一緒に笑っている「ふり」をしていたと、したら。

 

大好きな先生だから、いまはもうそんなこと、言っていないことを願うし、考えを柔軟に変えてくれていることを願う。そうじゃないかもしれないけれど、これは、祈りに近い。

 

わたしは、居たかもしれない彼ら彼女らを、傷つけた。無知で、笑い声で、傷つけた。

 

大人になった自分にできることは、どんな人であろうと、他人からその人の生に口出しされる謂れはないということを、それだけを、絶対に手放さないことだと信じている。

 

これも、祈りに近い。わたしは、それだけは、手放したくない。