およぐ、およぐ、泳ぐ

不安障害です。日々のことを書いていきます。

こぼれ落ちる

あるはるかのさえぐさです。

 

朝、通勤途中に倒れているおじさんがいた。早朝5時台。最初酔っ払いかと思ったけど、どうやら様子がおかしい。なんとか立ち上がろうとしてるけど、立ち上がれずに、うずくまっている様子だった。吐瀉物もない。雨が降っていた。おじさんが投げ出した傘に血が少しついている。

 

声をかけ、なんとか立ち上がるのを手伝おうとするも、何度やっても立ち上がれない。どう考えても、何かがおじさんの体に起きているとしか思えなかった。たぶん、放っておいたらダメな感じの何かが。

 

別の通行人の人が見かねて、おじさんが倒れている目の前にある総合病院に人を呼びに言ってくれた。ほどなくして守衛さんとなぜか業者の方が来る。

 

何度事情を説明しても病院に入れてくれない。医療に繋げようとしてくれない。よくあることだからそのように対応しようとしただけなのかもしれない。でもその対応は、倒れていたおじさんの心を、ぽっきり折ってしまった。

 

時間が経ったからなのか、立ち上がれるようになったおじさんは、そのまま仕事に行こうとする。守衛さんたちはもちろん止めない。何か、何か命に関わるようなことが、おじさんの体に起きているかもしれないのに。

 

ほどなくして、別の通行人のひとが呼んでくれていたお巡りさんがきた。お巡りさんは、仕事に行こうとするおじさんを怒った。おじさんよりもうんと若い、お巡りさんだった。

 

「命に関わることかもしれないんですよ」

 

冷静な口調で、きびしく、おじさんに伝えた。守衛さんたちは何も言わなかった。わたしはあとを任せて電車に乗った。

 

あのままお巡りさんが来てくれなかったら?

おじさんの命はどうなってたの。

倒れてたのが私だったら?

それともコロナだから病院に入れてくれなかったの?

 

こぼれ落ちる命と拾われる命がある。おじさんに何事もありませんように。どうか折れた心にやさしく触れてくれる手がありますように。