およぐ、およぐ、泳ぐ

不安障害です。日々のことを書いていきます。

紋切り型の夏

あるはるかのさえぐさです。

 

日々はもうすでに夏の盛り。青い空に白い雲、じっとりした湿度に灼けるようなアスファルト。繰り返された記号のような夏に、今年も息をしている。

 

ぷりぷりと怒りながら自動販売機の下を器用に折り畳み傘の柄でまさぐる男性とすれ違う。小銭がないとわかると、小言を吐いて、また次の自動販売機に向かう。手際の良さと、不穏な空気と、でも彼なりの理由があるのだろうという思いと、一瞬の身体の強張りと。

 

黄色い線に比較的近いところで電車を待っていたけれど、彼が過ぎ去るまで、線から数メートル下がって、電車を待った。もしかしたら、突き飛ばされるかもしれないと、ほぼ無意識に思ったから。

 

彼は果たしてこの車両に乗っただろうか。その怒りの矛先がこちらに向く、という確証などないのに、なぜか私はあらかじめ「準備して」いる。怒りの矛先は、私たちなんかではなく、もっともっと別のものかもしれないのに、だ。

 

ソフトクリームみたいな雲が車窓の向こうにいくつも浮かぶ。なんて紋切り型の夏だろう。いつも通りを装う夏。緊急事態下の、東京に閉じ込められた、夏。