嬉しかった日
開館してはじめての出勤だった。
利用者の方々がいる図書館は、いつもよりうんと綺麗に見えたし、場所が、生き生きしているように感じられた。
使ってくれる人がいて、はじめて、かがやきを放つ場所というものがあるのだなと、しみじみした。
利用者の方々、主に、小学校低学年くらいまでの方々と、その保護者の方をご案内した。
みんながみんな、それぞれに選んだ本を抱えて帰ってゆく後ろ姿は、なんだかとても良いものだった。
その本を、読んでも読まなくても良いのだけれど、そのただひとつの本を手に取って、家に持ち帰るその行為が、とても良いものだと思った。とても良い、うまく言えない、良い日々の、たしかな断片という感じがした。
たくさんのお母さん、お父さんと、そのこどもたちが来てくれた。こどもの放つ体温は、その場をぱっと明るくしてくれる。不思議だなあと思って、ずっと見ていたいなあと思って、ご案内しながら、じんわりと嬉しい気持ちになっていた。
ちいさな子も、おおきな子も、いわんや大人も、この場所に来ているときは、心置きなくぼんやりしてほしいし、安心していてほしいなあと思った。
そのお手伝いが、ほんの少しだけでも出来るなら、これ以上嬉しいことはないなあと、確信した日だった。
みんな、図書館に来るといいよ。疲れたら図書館に来るといい。本を読もうが読むまいが、そこには、たぶん、居場所があると思う。いつもとはちがう居場所が、あなたを待っているよ、「大丈夫、大丈夫」というささやきが集まっている場所じゃないかなあと、思う。