およぐ、およぐ、泳ぐ

不安障害です。日々のことを書いていきます。

普通じゃない

仕事場にて。

扉ですれ違うときに、どうぞお先に、と、おじさんに道を譲った。そうしたら、おじさんは私をしげしげと見て、話しかけてきた。

 

「あなたお名前は?」

 

「○○と申します。」

 

「あんたいいことあるよ!下の名前は?」

 

「(名札を見せながら)××です。」

 

「あんたいいことある!だってここにいる人間はみんな普通じゃないんだから!」

 

「そんなことないですよ。」

 

「普通じゃないよ!みーんな足ヨタヨタして、普通じゃない!働けないんだから!普通じゃない!」

 

「そんなことないですよ。」

 

「普通じゃないんだよ!ここにいる人間はなあ、ふつうじゃないの!だって生活保護もらってんだから。みーんな足よたよたして、ふつうじゃないの!ね!」

 

言い終えるとおじさんは去り、気がつくと背後には警備員さんが居り、横には女性がいた。女性は、

 

「大変ねぇ」

 

と、誰に言うともなく言って、エレベーターに乗っていった。

 

 

 

おじさん。おじさんに、「普通じゃない」って言わせてるものって、なんなのかな。扉ですれ違う時に、道を譲っただけで、私に「あんたはいいことある!」って言わせた何かって、なんなのかな。おじさん。おじさんは普通じゃないかもしれないよ。でも、みんな普通じゃないよ。普通じゃないし、少なくとも私は、誰に言うともなく「大変ねぇ」って言った、言い放っていなくなった人よりも、おじさんを信じるよ。本当はただの酔っ払いでも。ただのグダグダな人でも。私はおじさんのほうが、おじさんの言葉を借りるなら、普通だと思ったよ。おじさん。おじさんは、普通だよ。普通だから、そうやって私に、言ったんでしょ。ちがうかなあ。