およぐ、およぐ、泳ぐ

不安障害です。日々のことを書いていきます。

いつもの匂い

あるはるかのさえぐさです。

 

スーパームーンの欠片も見ることなく20時には布団にいた。暑くなってくると身体も硬くなるから気をつけて、と、昔通っていたボイストレーニングの先生(のちに、謎の商品の購入を勧められてやめた。5年も通ってたのにそりゃないぜ!)の言葉を思い出す。

 

仕事中に、身体のあちこちが硬くなってゆくのがよくわかる。清掃してまわる、動き続ける仕事なのにも関わらず、「同じ動作を繰り返し」ていると、使わないところ、使い過ぎているところは、どんどん硬く、流れが滞っていくようだ。

 

朝6時から滴る汗を拭きながら、誰もいないことを確かめて、鼻だけマスクから外気に触れる。息を吸うといつもの匂いがする。この場所の匂いが「いつもの匂い」になってから、まだ半年も経たないのに、鼻腔はおりこうさんだ。ここはもうわたしの「いつもの場所」。

 

昨日までは晴れていたので、窓と窓と窓に降りているサンの隙間から、朝日が差し込んでいた。誰もいないデスク。起動されることを待つPC、業務用プリンター。昨日の仕事がきっとあちこちで主人を待っている。わたしはその隙間を縫って掃除機でいろんなものを吸っていく。わたしの相棒コロちゃんを転がし(ときに転ばせながら)床に落ちた昨日の、その前の、もっと前の、欠片を吸っていく。

 

なるべく誰かが来る前に、終わらせておきたい。誰かが来ても本当はいいのだけれど(お掃除の人、みなさんの会社にもいらっしゃるでしょ、あれです私)、どうも、その誰かに悪い気がするので、いつもなるべく、できる限り早く動いて、朝日が差し込むオフィスに誰かが来る前に、その場を立ち去るように動いている。

 

でも、急いでも急がなくても、今日は身体が動かんな、てか心死んでるな、となっても、だいたい終わる時間は同じなのだった。頭よりも心よりもずっと身体は利口だ。それに助けられている。

 

だからなるべく、身体の滞りは労ってやりたい。休憩時間になればぐるぐると肩をまわし、足首をまわし、首を上下左右に倒し、腕を伸ばし、タバコを吸うついでに外の一日を鼻腔に教えてあげる。今日は晴れですよ、今日は暑いですよ、今日はこんな匂いですよ。

 

今日は雨。駅までの道のりでもう小雨が降っていた。気温が低いので呼吸がしやすい。オフィスに朝日は差し込まないだろう。でも大丈夫。身体が覚えている。朝日の差し込むオフィスの匂いを覚えている。そして雨雲が垂れ込める朝の匂いも、きっとこれから、わたしの「いつもの匂い」になっていく。