いもむし毛虫、ひかりのほうへ
あるはるかのさえぐさです。
なんでもやる前に石橋をバンバン叩いてきた。バンバン叩いて、そのうち叩くことが目的になっていたような気さえする。それでもじりじりと、じりじりと、毛虫のように進みながら、過ぎてゆく景色を見ていた。
あちらにもこちらにも分岐はあり、どの枝先も葉が繁り先が見えず、なんとなく、木漏れ日の差すほうへ差すほうへ進んでいたつもりだ。
今いるこのぽっかりした場所は、私がしがみついている大樹(もしくは意外とちいさな樹木だったりして)の、どの辺りなのだろう。まだ地上から5センチくらいの場所だったらウケる。
それでも、5センチまでの間に、幹は、触感も匂いも景色も違った。甘い蜜が出ているような場所もあれば、棘が飛び出ているような場所もあり、寝ぐらにできるような隙間もあった。
直線じゃなくて、らせん状に、らせん状に、光の匂いのするほうへ、辿ってきたんだろうと思う。
この先、この大樹から落ちてしまうのかもしれないし、羽化してさようならをするのかもしれない。どちらにせよ、どちらの選択にせよ、それが自分で選べないとしても。どちらの景色も味わえる自分でいたいなと思う。
湿気の多い季節は、木の甘い香りただよう、気がする。