およぐ、およぐ、泳ぐ

不安障害です。日々のことを書いていきます。

行くあてのないサブナード、ヘイトと漣

いらっしゃいませ、ご来店ありがとうございます、エスカレーターにお乗りの際は、足元にお気をつけください

 

緊急事態宣言でほぼ全ての店が閉まっていた。早朝と変わらない風景の新宿サブナード。各テナントからのBGMがないだけで、こんなにも空間が広く感じることに驚いた。

 

いらっしゃいませ、ご来店ありがとうございます、エスカレーターにお乗りの際は…

 

普段たくさんの音に埋もれているから、こんなにはっきりと聞き取れることにも驚く。生活必需品の衣服を扱っているビックロ帰りの大学生らしき子達が、閉まったサブナードの真ん中でぼんやりしていた。

 

何食う?

 

とつとつと呟く男の子の声が聞こえた。空いてる店は、あるのかな。飲食店街は、あいているといいねと思う。

 

 

職場のオフィスビルで、受付のお姉さんに怒鳴る男性を見た。横顔からでも訴えたい何かがあることはわかった。その話を同僚の70代の女性に伝えたら、開口一番、

 

「日本人?」

 

と聞いてきた。そうだよ、日本の人で、男性の方。受付のお姉さんがかわいそうだなぁと思って。

 

「そうね、可哀想ね」

 

彼女が本当は持っていきたかった会話の流れを知っている。彼女だけじゃない。そんなに少なくない人が、「○○人はどうだ」「○○人はこうだ」「だから外国人は嫌いなんだ」と、平気な顔で言う。そういう職場。

年齢層が高いから、なんだろうか。だからいつも、こういう反応の時は、彼女が欲しがっている会話の流れにしないように抵抗する。ちいさく。

 

もし同僚のなかに、あなたが貶めているその国にルーツを持つ人がいたら、それを隠していたとしたら、どうするの。いま、エレベーターで一緒になった人の中に、あなたが「汚らしい」と嫌っている国にルーツを持つ人がいたら、どうするの。

 

いつも喉もとまで出かかって、飲み込んで、その国の人、何か理由があって日本にやってきた外国の人のことを思う。白人に対してだったら、そんなこと思わないんでしょ?とも。

 

ちいさな抵抗は、誰にも知られなくていい。ただ、これが漣のように広がって、普通になって、どの国にルーツがあるのかも、例えば自分のセクシャリティのことも、特別なことなんかでなく、ただただ普通に、受け止め生きていける国になったらいいのにな。

 

広大な地下街のほとんど全てを閉めても尚、オリンピックをやるこの国は、きっと、あなたが貶めている他所の国から、わけがわからないと思われているよ。だって、この国に住んでいるわたしですら、わけがわからないから。