およぐ、およぐ、泳ぐ

不安障害です。日々のことを書いていきます。

白いシャツ、赤いスカート、黒いフリルの靴下

目の前をおじさんが歩いていた。

赤いチェックのロングスカートに白いシャツ。黒いフリルの靴下に革靴。髪型は白髪、後ろ姿だけみても、顔は男の人なのだろうなあとわかる。すらりと身長が高く、新宿の街に溶け込んでいた。

 

たまたま後ろを歩いていたわたしは、何メートルかあけて、彼または彼女のあとをしばらく歩くことになった。進行方向が一緒だった。

 

エスカレーターに乗る。二段あけて私も乗る。すると彼または彼女が振り返った。そのあとも私のことなのか、うしろの誰かが気になるのか、わたしが改札に入り、彼または彼女がそのまま別の方向へ去るまで、何度も何度も振り返っていた。

 

わたしは、とてもいいなと思っていた。好きな服を着ればいい。どんな人だって好きな服を着ればいいと心の底から思うから、どんな心中なのかはわからないけれど、スカートを履いて歩く姿を、とてもいいなあと思っていた。

 

彼または彼女の姿を見てみて、凝視しながら通り過ぎる人、通り過ぎてから振り返る人、様々だった。

 

もしかしたら、過去に、背後から何か嫌なことをされた経験があるのかもしれない。だから何度も振り返っていたのかもしれないし、ただ、そういう癖のある人だっただけかもしれない。

 

大勢が行き交う新宿の地下に、彼または彼女は消えていった。わたしはその後ろ姿を、やっぱり、いいなと思った。