ちいさな愛
窓を少し開けて
かべにもたれかかり座る
カーテンの隙間から
煙草のけむりを外に吐き出す
雨 少しの風がカーテンを揺らして
裾野がわたしのまぶたを撫でる
やさしく
外 ハイヒールの音 笑いながら過ぎゆく
雨を巻き上げて走り去るバイク 規則正しく止まり ポストに新聞を差し込む
コンクリートの水滴を裂いて車輪をまわす自転車 どれもあっという間に消えた
今日 世界はやさしい 今日 世界は怖くない
今日 わたしは部屋の中にいるから 今日 わたしはどこにも行かなくていい
ここに居ていい
冬と春が入り混じった雨の匂いを嗅ぎながら
カーテンの裾野に願う
もう少しだけまぶたを撫でていて
後少しだけ 後少しだけまぶたを撫でていて