およぐ、およぐ、泳ぐ

不安障害です。日々のことを書いていきます。

溶ける、ガラス、探す

今朝目の前を猫が横切った

真っ白い、ふっくらとした猫だった

冷えたコンクリートに熱を奪われぬように

知らぬ人間の視線からあっという間に姿を消した

 

日が昇る前の闇の中に 真っ白な猫は溶けていった

 

昨日 人が倒れていた場所には何もなかった

何もないことに安堵して

昨日 倒れた人を

声を掛け合って介抱した他人と再びすれ違った

 

視線を合わせることを私は避けて

何も知らぬ、昨日までのわたしのように

その他者を横切った

日が昇る前の闇に消え入るように

 

匿名の顔に戻り 日々に溶け込む

昨日のような非日常がいつ降りかかるとも知れずに 日々に溶け込む

ガラスのひびが少しずつ裂けていくように

いつかこの透明の膜すべてが

粉々に砕けやしないだろうか

すべて粉々に

そして春の風が すべてを攫ってくれやしないか

 

匿名の顔に戻り 日々に溶け込む

何が言いたいかわからないからこうやって親指で探っている

わたしのことばはどこだ

どこにいった?