マスクを忘れた罪
マスクを忘れた。持ってきていないこと、マスクをつけていないこと気が付かないまま駅についてしまった。
駅の売店はまだ開いていない。仕方がなくこのまま電車に乗り込む。
どこでマスクを買えるか、職場までの道のりで1番職場に近いコンビニの場所に頭を巡らせる。幸いスヌードをしてきていたのでスヌードで口元を覆いながらマスクを忘れた罪を乗客から隠している。
マスク1枚の罪の重さ。去年の同じ時期にはすでにこの世にあった罪。その前までは「存在しなかった」、罪になる以前の、「マナー」や「エチケット」の範囲だったものが、明確にいま、罪として、私の身の上に存在している。
プラカード立てて置きたいくらいな気持ちだ。
「わざとじゃありません。うっかり忘れただけなんです。職場に着くまでに必ずマスクを用意します。車内ではスヌードを口元にぐっと押し付けておきます。だから『許してください』」
誰に?誰に許してほしい?
わたしは誰に謝っているんだろうね。